百姓日記

百姓をやるために田舎で生活しています。

発芽して育つ種を選ぶ

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F1と固定種

何種類かの野菜を栽培している。農薬を使うときもあれば使わないときもある。基本的に農薬は散布したくない。「体によくない」が理由ではなく、めんどくさいから。防除服来て、顔には防護マスクを着用、タンクに農薬を撹拌して動噴で巻いて、終わったら片付ける。夏場の猛暑のときの農薬散布は地獄。どうしても農薬を使わないと育ちにくい作物だけにはしかたなくやっている。

冬の作物は葉物中心になるので農薬使わなくても消費者が求める見栄えになるので農薬は使わない。単一作物をヘクタール単位で作っている農家だと農薬使わないと難しいだろうが、僕のところは使わなくて大丈夫。

まだまだ未熟とはいえ農薬を使わなくてもできる条件に種も関係することがわかってきた。腐食が多く何年も薬剤を使わない畑の土は、病害虫の影響を受けなくなるとよく言われるが、どういう種を使うのかもすごく大事だ。

ホームセンターなどで販売されている種のほとんどはF1といって、一代交配の種。野菜は放置しておくと「とうがたち」種を取ることが出来る。大根だと葉っぱから花が咲いてしばらくすると種ができる。F1だと種をとって植えたとしても育たない。

一方、固定種の場合はその土地に合うように交配され種を採取しているので、毎年使うことができる。一般の人は意識しないだろうけど、アグリビジネスのなかで種は莫大な富を生むのでグローバルに激しい競争が起っている。

代表的なのが悪名高きモンサント。

モンサントは、除草剤ラウンドアップと一緒にGMO(遺伝子組み換え)種を販売している。モンサント製のラウンドアップとGMOじゃないと野菜ができないようにしているわけだ。世界各国で嫌われているけど、日本だけはガンガン規制緩和している。無知だから。

モンサントについてはまた別の機会で書くとして、オーガニックや安心安全な野菜を求める消費者のなかには種にまでこだわる人がいる。「F1は危ない、交配されていて危険だ。固定種をもっと広めてつくるべきだ!」と。

僕も固定種は広がったほうがいいと思っているし、できるなら固定種で野菜をつくりたい。ただ、危ないからとかヒューマニズムではなく経済性の観点から。種買わなくてよくなれば経費が浮くし、他のことに投資できる。

自家採取して固定種を繋いだときにネックなのは発芽しないことが多々あること。日本古来のほうれんそう種をもらったときほとんど発芽しなかったことがある。種苗会社で同じ種を買ったら100%に近い発芽だった。

販売も関係してくる。

カブだと小カブ、中カブ、大カブと様々な固定種があるが、生育過程に合わせて順番に出荷できたほうが便利。小カブしか取れないと小カブだけで終わってしまうし、大カブだけだと小カブが欲しい消費者のニーズに応えられなくなる。具体的にはタキイ種苗の「耐病ひかり」がいい。生産者と消費者どちらのニーズも満たしてくれるから便利。固定種だと難しいだろう。

shop.takii.co.jp

生産者としては、野菜ができないと意味がないから固定種より買ったほうがいい。本当は採取したいけど時間的に厳しいし、発芽しなかったら意味がないわけで。F1であろうが自家採取であろうが、発芽して育つことが最も重要。

自家採取にこだわる消費者には、こういった事情があることを理解してほしい。理想はわかるけど現実的には労力と手間がかかりすぎる。

うーん、理想と現実どこで折り合いをつけるか、難しい。

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